インタビュー/analogに関わる人達

インタビュー 高木 秀直・チェリスト/靴磨き職人

投稿日:2017年1月26日 更新日:

高木秀直

高木氏との出会いは、今から数年前にanalogに来られていたお客様が偶然東京で出会った事。それも1人のお客様ではなく、二人のお客様が偶然に違う日、違う場所で高木氏と出会い、それぞれの口から「analog」というキーワードが共通点として出た事によってanalogでチェロの演奏と靴磨きを定期的に行うようになりました。高木氏とは僕との話の中で共感できる部分が多く、数年間に渡りお店ぐるみでお付き合いをさせて頂いています。

 

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高木 秀直氏 プロフィール

東京都出身 32歳 (2017年現在)東京音楽大学付属高等学校を経て、東京音楽大学チェロ専攻卒業。卒業後ドイツに音楽留学し研鑽を積む。
留学後に靴屋に就職し靴販売の仕事に従事する。退職後その知識に加え靴磨きに興味を持ち、現在チェリスト兼靴磨き職人として活動中。

 

Q.1 幼少期のエピソードや出来事を聞かせてください。

両親がチェリストという稀な環境で育ったため家の中に音があるのが当たり前でした。ただ両親は私に英才教育をするわけでもなく好きならやればというスタンスで無理に楽器を弾かせようとはしませんでした。

 

そのため私がチェロを始めたのは10歳からで音楽家としては決して早い方ではありませんでした。そして音楽の道に進むのですが何故その道を選んだかといえばただ勉強をしなくて良いことと両親がチェリストなので何とかなるような甘い考えからでした。

 

Q.2 海外留学の際の苦労や経験された事をお聞かせください。

ドイツに行く事になったのはほんの些細なきっかけからでした。私の両親の先輩のチェリストがドイツのオーケストラで活躍していてその方が私が大学4年の夏に日本に来ていていました。

 

そしてその方にお会いした時に『大学を卒業したらどうするの?』と聞いてきて自分は特に何も決めてなかったのでその事を伝えると『じゃあドイツに来たら?』と言って頂いたので行く事にしました。

高校大学と日本の音楽教育を受けたのですが何か行き詰まり感を感じてもいたので良いとも思いました。そして2007年2月私は大学の卒業式を参加せずにドイツのダルムシュタットという町の近くメッセルという村でその両親の先輩のお宅で居候生活をする事になりました。昼間は語学学校に通い午後には帰宅してチェロの練習をする毎日でした。

言葉はやはり難しいところがあり、ドイツ語で駅員に話しかけたら英語で返される事もしばしばで2007年の12月までいましたが最後まで慣れなかったです。最終的にはドイツの音大に入りたいと考えていたのですが自分の力量の無さもあり諦めて帰国する事にしました。

 

Q.3 チェロの演奏家でありながら、同時に靴磨きをされていますが、靴磨きを始められたきっかけはどんな事からですか?

きっかけはプロの靴磨き職人の講座を受けた事です。靴屋を辞めたすぐに講座を受けたのですが靴好きなのは変わるわけでもなくただ綺麗にできるスキルを身につけたかったのです。

講座は全5回で靴屋さんの時に学んだ事もあれば全然知らない事もあったりでとても楽しかったです。そして身につけたスキルをどうにか試してみたいと思うのは普通の事で最初は知り合いのバーで磨き始めて終いには新宿の路上に立つことにしました。

一番影響を受けたのは靴磨きの師匠が靴磨きと画家であった事や名古屋で路上靴磨きをしている学生がいる事をSNSで知り、自分もチェロ演奏だけではなく靴磨きも一つの仕事としてやっても良いのではないかと考えたのです。

 

Q.4 現在はどんな場所で靴磨きをされていますか?

新宿にある理容室zangriで平日の16:00〜20:00まで磨かせて頂いてます。あとアパレルのイベント等で磨く事もあります。

 

Q.5 靴磨きを始めてから、面白かった事や困った事などのエピソードがあれば教えて下さい。

路上で靴磨きをやってた頃は毎日が面白かったですね。色々な出会いもあったし何よりその出会いによってチェロ演奏を出来る場所を紹介してもらったりして自分の活動範囲が広がっていきました。

 

また夏のある日いつも通り路上でお客様待ちをしていたら通りがかりのご婦人が私に寄ってきて『暑いのに毎日大変ね。これで何か飲みなさい』と1000円札を私にくれて私は靴磨きは?と尋ねるとやらなくて良いと言ってすぐに歩いて行ってしまったのです。やり続けていると応援してくれる人が少しづつではあっても増えていく事を実感した出来事でした。

 

Q.6 靴磨きとチェロ演奏の中で、高木さんの感じる共通点のようなものがあればお聞かせください。

積み重ねる事ですかね。靴磨きは靴を永く履くために行う行為であり継続する事が大事だと思いますし、チェロも毎日の練習の積み重ねが本番の結果に表れてきます。

それに継続的に磨く靴に対する気持ち、古くて何代もの演奏者が引き続けてきたチェロに対する気持ち、どちらとも愛着が生まれるとも思います。

 

Q.7 僕は「ファッションとは生き様の事」と考えてお店や自社ブランドの運営をしているのですが、靴を綺麗に磨く高木さんにとってのファッション感や、高木さん自身が気を配っている事があれば教えて下さい。

服や靴に対していつも考えるのは永く着れるかどうかです。なので流行のモノをあまり好きにならないですし、生地でいえば肉厚でタフなもの。靴でいえば修理ができて履けば履くほど良くなるもの。

 

そんなモノの中で自分のキャラにあっているかを考えて選びます。『ファッションは生き様』にも近いですが服を選ぶ時は自分を知る機会でもあると思います。保守的なのか革新的なのか?カラフルなのか?モノトーンなのか?

そんな自分の中での考えが表現されるわけですね。その時々で選ぶ服が変わるのは自分の気分が変わるからでそれもファッションの楽しい部分だと考えます。

 

Q.8 現代では、今までの経験知から推測されたアルゴリズムに則った、要するに分析された売れ筋のファッションを売るお店が増えていると僕は感じているのですが、職人気質の高い高木さんからみて、そういったファッションや音楽についてどう思われていますか?

商売をするという事は利益をあげなくてはいけないので色々なデータを頼りにするのは理解できるのですが、そこに人と人が感じる温もりみたいなモノがないと長続きしないと思っています。

 

ファッションでいうと親身な接客だったり、その商品が持つストーリーだったり。音楽なら演奏者の人柄なり曲に対する共感だったり。合理化する流れは変えることは出来ないと思いますが受け取る側が人である限り温もりを感じる事は無くならないと考えます。そうであってほしいとも考えます。

 

Q.9 チェロの演奏と靴磨きを通じて、世の中に向けて発信したいメッセージのようなものがあればお聞かせ下さい。

好奇心を持って行動してほしいです。世の中には知らない事が溢れていてクラシック音楽にしても靴磨きにしても知らないだけで聴いてみたら意外と面白かったり、磨いてもらったら気分が良かったりすると思います。

ネットで何でも調べられる時代なので知る事は出来てもそのサービスを受けたら自分がどう思うのかまでは教えてくれません。興味をもった事に対して行動したら自分の中で何か変わると思います。

 

Q.10 最後に、僕のお店でも何度か演奏と靴磨きをして頂きましたがanalogについて感じる事があればお聞かせください。

いつも思うのですがアナログは私のパワースポットだなと。居心地の良さが抜群です。それは加藤さんの人柄なり寛容さだったりすると思います。だから自分も心を開けるし楽しめる。また伺うの楽しみにしてます。

 

インタビューを終えて。

高木さん、長々とインタビューにお答え頂きありがとうございました。このサイトは、analogという静岡県にある小さな衣料品店がお届けしています。

 

人にはそれぞれの生き方があって、それがファッションと強く結び付いているように僕は思い、ちっぽけな店が発信する小さなメディアとして「こんな生き方だったある」という事を書かせて頂いています。

 

たった一つの事に集中するのも間違いではないし、高木氏のように一つの考え方に芯を持ち二つの事を両立させてもいい。

 

高木氏の言うように、「好奇心を持って」という事がこの時代には大切な事だと僕も感じています。これは僕の世相感ですから正しくはないかもしれませんが、現代は疲弊した世の中だと感じています。

 

しかし、少し勇気が必要であってもそこに飛び込んでいく行動がきっと自分に変化をもたらします。人間は自分自身の中身は放っておいて、外側を自分の都合のいいように解釈して、外側を変えよう変えようとしたあげく苦しむ生き物ではないでしょうか。

 

外側ではなく、自分の内面に気づく事。そんな気づきをもたらす為にこのサイトを運営しています。幸せをつくるのではなく、幸せを感じる心をつくる。まさに、高木氏の存在そのものがそんな事を感じさせてくれたインタビューでした。

 

インタビューアー:analogディレクター 加藤正親

このインタビューは2017年1月に行った取材を元に掲載しています。

 

 

 

 

 

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